2022.08.14

東白川村産の桧でできた「コダマチェア」が完成

2020年から手掛けてきた「コダマチェア」が完成しました。2年の歳月を費やして、満を持して発表するコダマの新プロダクト。プロジェクトの拠点でもある東白川村産の桧をたっぷり使った、贅沢なつくりが特長です。

過去のコラムでも何度か登場している「コダマチェア」ですが、改めてどんなこだわりが詰まったものなのか、みなさんに知っていただければと思います。

今回採用した木材は桧。日本人にはなじみの深い木ですよね。でも実は、桧など針葉樹を使った椅子は全国的に見ても珍しいもの。なぜなら、針葉樹は密度が低くて柔らかいため、人の体重を支える椅子の材料としては十分な強度が出ないといわれているからなのです。

しかし、日本の森林の50%以上を占めるのは針葉樹。プロジェクトの拠点である東白川村も例外ではありません。モノや素材を通して、「上流の山と下流の街の人と人をつなぐ」、というコンセプトを掲げる私たちの使命は、この針葉樹を使ったモノづくりにあると考えています。そこで、「コダマチェア」の素材は、あえて難関といわれる桧で製作することに決めました。

デザインを担当した村澤さんは

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村澤さん

椅子は家具のなかでも特殊です。人の体に触れる、支えるという点で、デザインや座り心地の良さだけでなく強度が必要とされます。毎日使うものですし、何年も使い続けられるものを、と考えると強度はクリアしなければならない大きな壁でした

と話します。

せっかく買った椅子が1年足らずで壊れてしまったら、信用はガタ落ちです。針葉樹でありながら強度を出すためには、簡単に折れたりしないよう、木材を太くする必要が出てきます。そこで、製作を担当するメンバーの内木さんと綿密な打ち合わせを重ね、桧を層にするというアイデアにたどり着きました。

まず桧を4層構造にして大きな塊を作ります。そこから特殊な工具を使い、背もたれの部分を削り出していくことで、美しい桧の木目を生かしたつくりにすることができました

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内木さん

見た目にも納得のいく「コダマチェア」の試作品が完成しましたが、強度試験をクリアするためには数々のハードルが待ち受けていました。

▲ 強度試験の様子

強度試験には、家庭用、オフィス用、学校用、公共施設用といった使用用途別に、クリアすべき基準が設けられています。日常の家具としての強度を備えているかを確認する「静的試験」と、急激な力を加えた場合の強度を評価する「衝撃試験」、長期使用における反復動作に耐えられるのかを試す「耐久性試験」の3つをクリアして、ようやくユーザーの手元に届けられる状態になります。

▲ 背もたれを下から見てみると、ひびが入っているのがわかります。

60kgの重りを座面に載せて、背もたれ部分を機械でつまみ負荷を加える試験では、背もたれの接合部分が見事にはがれてしまいました。

▲ 原因は何なのか―。椅子をすべてばらして追及します。

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村澤さん

一番の原因は、背もたれの接合部分に強度が足りなかったことです。対策として、接合部分の加工を見直してさらにダボとネジで補強することにしました

綿密なすり合わせと試作を繰り返した結果、強度試験7000回をクリア!強度も十分な桧の「コダマチェア」が完成しました。

針葉樹ならではの柔らかい手触り、たっぷりとした桧の背もたれ以外に、「コダマチェア」にはもう1つの特徴があります。

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村澤さん

椅子は後ろ姿も重要なポイントです。人気の高い北欧スタイルをモチーフに、直線的な脚を意識したデザインにしてみました

針葉樹で強度のあるものをつくるには、太くがっちりとしたものをつくればいいのですが、それでは見た目が損なわれてしまいます。

デザイン性も納得のいくものに仕上げるためには、座面のサイズや脚の取り付け位置の工夫が必要。最終的に、座面の間口を広めにして奥行を浅くとることで、デザイン、強度ともに満足度の高いものを実現することができました。

こうして後ろ姿も美しい、桧の椅子が誕生したのです。

東白川の桧を使った匠の椅子「コダマチェア」。
絶妙なフィット感と、針葉樹ならではのぬくもりを感じていただけるものに仕上がりました。

座面のファブリックを自由に選べたり、オイルを自分で塗ったりしてカスタマイズできるのも魅力のひとつ。愛着を持って育ててもらえたら嬉しいです。

椅子の素材としては敬遠されてきた針葉樹。こうした活用の実例が増えていけば、日本の林業の未来も少しは変わっていくのではないかと考えています。「コダマチェア」はこれからの針葉樹の可能性をグッと広げ、未来を明るく照らすプロダクトになってくれると私たちは信じています。

(取材・文/まつおまいこ)

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