2026.02.17
コダマプロジェクト活動発表会2025
~11年目の物語~開催

岐阜県中津川市にある檜創建では、木曽檜をはじめとする国産材を使用した木製の浴槽を製造販売しています。今回は、そんな檜創建の新工場を見学させてもらえるとのことでお邪魔してきました!


小栗さん
第二工場をつくった背景には、労働環境の改善や生産性の向上、そして職人による手加工の現場を多くの方に見ていただきたいという思いがありました
生産ラインのレイアウトを大幅に変更して完成した第二工場には、檜創建が考える「未来のものづくり」がたくさん詰まっています。その取り組みのひとつが、一般の方も参加できる工場見学プログラムです。今回は、私たちプロジェクトメンバーが実際に工場を見学してきた様子をレポートします。

現場に足を踏み入れる前に、まずは檜創建の理念や製品についての説明からスタートしました。そこで語られたのは、伝統的な職人技を大切にしながら、現代のライフスタイルに寄り添うデザインを重ねていくという考え方。日本が誇る「お風呂」の文化を、新たな視点で提案していきたいという想いが伝わってきます。
誰もが名前を知る名だたるホテルをはじめ、温泉やリゾート施設での施工事例も紹介され、その完成度の高さに思わず「ほぉ」とため息がもれてしまいました。

また、福祉施設向けの介護浴槽の開発にも比較的早い段階から取り組んでおり、東海地方にとどまらず、岡山や大阪といった遠方の施設にも導入されているとのこと。大型施設向けだけでなく、個人宅用の浴槽も数多く手がけており、その魅力にも惹きつけられます。
代表的な製品である「O-Bath」シリーズはグッドデザイン賞を受賞。楕円のやわらかなフォルムと、木曽檜のほんのりピンクがかった木肌が印象的で、自然と視線を引き寄せられました。

プロダクトの画像を見て、まず目を奪われたのは、そのなめらかなフォルム。「どうしてこんなにきれいなんだろう?」と眺めているうちに、木のお風呂に欠かせないはずの「タガ」が見当たらないことに気づきました。
一般的な木製風呂には、水圧に耐えるため、外側に銅やステンレス製の「タガ」が付いています。ただ、金属が入ることで、どうしても印象が変わってしまうことも。
そこで同社が選んだのが、「タガ」を使わないという選択。檜そのものの美しさを引き出すために、独自の技術が生み出されたのだそうです。

そんな技術開発の裏側や製作工程など詳しくお伝えしたいところですが、当然そこは企業秘密とのこと。工場見学中の撮影も不可なので、ここから先のレポートは想像しながら読んでいただけたらうれしいです。

ガイドを務めてくださったのは檜創建の堀内さん。まずは、材料を加工する場所に到着。木材の厚みを決めて削り加工をしたあと、板と板をぴったりと合わせる本実(ほんざね)加工をしていきます。

堀内さん
木の色味を揃えたり、材料の良し悪しをここでチェックしたりしています。すべての製品のスタート地点がここなので、慎重に見極めることが必要となります

続いては板のハギ合わせといわれる作業。複数の板を圧着して接着します。

堀内さん
板の反りを低減するために必要な作業となります。圧着は機械ではなく手締めで行うのがポイントです。手作業のほうが細かい部分の微調整ができるんですよ
丈夫で美しい製品に仕上げるためには、部材を狂いなく刻む必要があります。次の工程では、浴槽のヘリにあたる部分の細かい刻み加工作業を見せてもらいました。


堀内さん
この作業は長年の経験と技術が必要とされます
大きな機械で溝を削り出す作業。美しいカーブを描く際にはかなりの繊細さが求められるそうです。
ここまでが、第一工場での作業。そしてここから新設された第二工場での作業となります。
組み立て・仕上げの工程ではここまで見てきた部材が組みあがる場面。見学者の私たちの気持ちも昂ります。
木槌のようなもので部材を叩いて組みあげていく様は、まさに職人技!工場見学って、こういう職人の手仕事を見られるのがだいご味ですよね。複雑な形状の部材をひとつひとつ手作業で組んでいく職人の技を間近で見られて感動しました。

こうして浴槽の形に整った製品は保護剤を塗布されます。優しい手触りと自然な艶を出す塗料は、木の呼吸を妨げない特別なものだそうです。できあがった浴槽は、梱包され、出荷されます。この日も海外に送られるのを待つ梱包済みの浴槽が、出荷の日を待っていました。
職人さんたちが木材を見つめるまなざしや、工具をつかって作業する姿を見るのは、なんとも新鮮なもの。使い手側のわたしたちに届くまでに、こんなにも繊細な作業があって職人さんたちの手仕事の極みが詰まっているんだな~と感じました。木の温もりを届けたいという職人さんたちの想いが伝わる工場見学でした。
第一・第二工場の見学を終えたところで、ガイドは小栗社長にバトンタッチ。何やら第二工場には、小栗社長肝いりの美術館も併設されているとのことで、そちらの見学もさせてもらいました。

美術館の名前は「Roka Museum」。

小栗さん
浴室総合プランナーである檜創建が、入浴文化を後世に伝えていくにはどうしたらいいかといいう考えが、美術館開設の根底にあります

2025年10月のオープンから「finally, we met」と題した初回企画展を開催。各地のイベントで出会ったさまざまなアーティストの作品を展示しています。
今回は小栗社長の案内のもと、ひとつずつ作品を解説していただきました。
11の作品が展示されるなか、特に目を引いたのは「鳳凰」と名がついた作品。2022年明治村で開催されたイベント「IMA 風呂と台所と私の暮らし展示」においてライブペインティングで完成した、現代美術家WAKANA KIMURAさんの作品です。

浴槽からあふれ出る水のごとく、極彩色でダイナミックに描かれた「鳳凰」。エネルギーに溢れた力強さを感じます。

小栗さん
このイベントが開催された2022年は、まさにコロナ禍の真っただ中。水回りメーカーとして、何ができるのかを模索している時期でした。イベントの開催そのものがタブー視される空気のなかで、素材の美しさが魅力の木曽檜に絵を描くことも、また一つのタブー。それでもあえて、そうした“タブー”に向き合ってみる——このイベントは、そんな挑戦でもありました

檜風呂とアートには、人間が五感を取り戻す装置のような役割とでもいうのでしょうか。香り、温度、触感で体に訴えかけるという点で共通点があるようにも思えます。

小栗さん
美術館の創設は、人と地域、文化と産業を横断した新しい取り組みとして考えています
と語る小栗さんもまた、アーティストなのだな~と感じました。


もう1つ檜創建の特別なお部屋にも案内してもらいました。ここは工場の2階に作られたイベントスペース。過去のイベントで制作してきた檜の作品やプロダクトが並べられています。

大きな卵みたいな作品も、実はお風呂。三層で作られたフレームは独特の加工で外の光が透ける構造になっています。お風呂に入っている人にはお湯にたゆたう幻想的な光のゆらぎが楽しめるそうですよ。


小栗さん
秋にはこの場所で音楽イベントを開催しました。今後も不定期にはなりますがイベントを開催して、一般の方にも親しめる空間にしていこうと考えています
アートという側面から「“檜”と“地域”の魅力を再発見する」というコンセプトにアプローチしている檜創建の試み。工場見学や美術館、イベントの開催を通して、その価値を広く発信していこうという姿勢が強く印象に残りました。

(文:まつおまいこ)








