2020.06.20
山を丸ごと体験できる「コダマの冒険旅行」開催
岐阜県加茂郡東白川村で、山を体験し、森を楽しみ、木を知る特別な森林体験「コダマの冒険旅行」が開催されました。1年に1度行われる冒険旅行に、今年は5組の親子が参加。3歳~15歳と幅広い年齢の子どもたちが集まり、にぎやかな2日間を過ごしました。
まつおさん
リポーターはまつおが務めさせていただきます
そもそも「コダマの冒険旅行」とは…
▲ 毎年3月に開催される「コダマの冒険旅行」。今年は新型コロナウイルス感染拡大防止のため、日程は6月にずれ込みましたが、なんとか開催することができました
私たちに水の恵みを与えてくれる山。地元の山の木を適切に間伐し使うことで、山と街の循環を守っていきたい、そんな発想から生まれたのがコダマプロジェクトの学習机「コダマデスク」です。
そして、この「コダマデスク」をご購入いただいた方に、もれなくついてくるのが「コダマの冒険旅行」。
「僕の机はどこから来たの?」
「どうやって作られたの?」
デスクの素材となる木が育つ山で過ごし、工場を見学しながらワクワクを体験するのが「コダマの冒険旅行」です。
山菜採りやネイチャーゲームを通じて森に親しむ
▲ 東白川村の村長・今井俊郎さんから歓迎のご挨拶
冒険旅行の拠点「こもれびの里」にて、東白川村の村長から歓迎のご挨拶をいただき、まずは晩御飯の材料となる山菜採集に出かけます。
まつおさん
白川茶の産地である東白川村。茶畑ではお茶の新芽をたくさん摘みました。足元にはワラビも生えています。時には山ウドの新芽なども見つけられるそうです。
▲ 前日までの雨がやみ青空が広がります
最初は緊張していた子どもたちの顔もどんどんほぐれて、楽しそうな笑顔がはじけます。
▲ 「見て!いっぱい採れたよ~」
▲ こんなに大きな朴葉の葉っぱも採れました
山菜を採集した後は、森の探検に。ナビゲートしてくれるのは「こもれびの里」を運営する森林インストラクターの村雲さんです。
ネイチャーゲームでは、森の中を散策しながら宝探しをします。
▲ 村雲さんからゲームの説明
村雲さん
さぁ、ここからはみんなで“森のカモフラージュ”ゲームをします! この中に、自然の中にはないものが混ざっています。みんなで探してみましょう。
村雲さんの掛け声のもと、大人も一緒になって目をこらします。
▲ 「こんなところに恐竜のおもちゃがあるよ」「あそこにも!」
ただ歩いているだけでは見つけられない、森の中の生き物や草木、自然をいろいろな角度から観察してみる、それがネイチャーゲームの狙いです。
森を歩きながら、立ち止まったりしゃがんだりすると、不思議な形の枝や葉っぱ、昆虫が鳥に食べられないように身を守る生体や、リスがかじった松ぼっくりの食べ跡など、面白いものがいっぱい見つかります。
▲ 通称“森のエビフライ”。これは、リスがかじった松ぼっくりの芯です
散策しながらたどり着いたのは「みんなのおやま」。森を身近に感じ、山と親しめるようにと、すべての人に開放された空間です。
まつおさん
この辺りにはニホンカモシカが生息していて、木の枝には角を研いだ跡が。改めて、動物にとっても山は大切な生活の場なのだな、という実感がわきます。
▲ 清々しい空気を感じる「みんなのおやま」
ハンモックでゆらゆらしながら遊んだり、湧き水を飲んだりして小休憩。
村雲さん
みなさんの家では水道の蛇口をひねったらお水がでてきますね。それは、この辺りを流れる白川や飛騨川、木曽川といった川の水が元になっています。
そして川の水というのは山から流れてきたもの。山が元気でないと、きれいな水は作れないのです。
上流に住む私たちは、街に住むみなさんがいつもきれいな水を飲めるように、山を手入れして水を守っています。
と村雲さん。
▲ 湧き水を飲んでみます。「冷たくて美味しい!」
当たり前の生活も、山があって木があるからこその恵みなのだなと感じました。
僕らの「コダマデスク」
材料が作られる木材工場へ
▲ たくさんの木材が積み上げられた工場内。製材用の機械にも圧倒されます
次は木材の工場見学です。訪れたのは車で10分ほどの場所にある(株)山共さん。
「コダマデスク」の素材や、家や家具を作るための木材はどのように加工されているのでしょう。
山から運ばれてきた木は、大きな機械の中を通るとあっという間に皮が削られてきれいな丸太になって出てきます。
皮を剥いだ丸太はローラーの上でゴロゴロと転がりながら次の工程へ。
▲ ゴロゴロと運ばれてくる丸太
丸太は、指定されたサイズにカットする機械へと運ばれていきます。スイッチを押すと木材のカットがスタート。レーザーで赤く記された場所が一瞬でカットされ、角材となって戻ってきます。
▲ レーザーで印がついた場所をあっという間にカット
▲ 一瞬でカットされる様子に親子で驚き
ふだんこんな場所は見ることができませんし、こんなに機械化されているのも驚きです
お父さん、お母さんも子どもと一緒になって楽しんでいる様子。
▲ 「気持ちいいね」。木の手ざわりを確かめます
山から切り出された木材はこのような工程を経て、職人の手に渡り、加工されて使い手の元へ届けられます。
自分たちが使う学習机「コダマデスク」の原点を知る貴重な時間となりました。
▲ 木を削る時にできる木材のチップ。チップの山に登って記念撮影!
特別天然記念物
オオサンショウウオが棲む森
清流にしか住まないというオオサンショウウオは、日本の固有種で世界最大の両生類です。
シーラカンスやカブトガニなどと並び「生きた化石」と呼ばれるこのオオサンショウウオが見られるかもしれないということで、近くの川まで移動します。
まつおさん
川とつながる狭い用水路に入っていくと…
▲ 渓流や小川に生息しているサンショウウオが、用水路に迷い込むことはたまにあるそうで…。狭い水路をまたぎながら探してみます
いました!
体長40~50cmくらいの固体が4匹も!
丸くて平べったい頭、短い手足、茶色い斑点のある体、ヌメヌメしていそうな皮膚。グロテスクにも見えますが、よく見るとかわいらしくもあります。
岐阜県以西の本州や四国、九州の一部でしか見られないとあって、愛知県に住む私たちにとって東白川村はオオサンショウウオが見られる一番身近な場所といえます。
▲ オオサンショウウオが棲むということは、水がきれいな証拠
まつおさん
環境の変化や、河川工事などによってオオサンショウウオの数はどんどん減っています。
なかなか見ることができない生物を見ると同時に、こうした希少生物の棲み処を守っていかなくてはという想いが強く残る体験となりました。
山って美味しい!山の幸をいただきます
▲ 自分で採った山菜をモリモリ!
森を歩いてお腹がすいてきたところで、「こもれびの里」に戻って夕食の準備に取り掛かります。
事前に村雲さんたちが用意してくれたアマゴを自分たちでさばいて焼いてみます。
▲ はらわたの処理の仕方を教えてもらいます
▲ お父さん、お母さんに手伝ってもらってチャレンジ!
アマゴの口から串を入れ、中骨に絡ませながら刺す「踊り串」を教えてもらいます。怖がる様子もなく、どの子も果敢に挑戦していました。
▲ 散策中に採った朴葉の葉っぱをお皿に
昼間に採集してきた山菜は天ぷらに。
自分たちの手で採ってきたものは、いっそう美味しく感じられたことでしょう。
▲ お茶の葉やワラビを天ぷらにします
▲ 東白川村の特産品「朴葉寿司」もいただきます
晩御飯のあとはナイトハイクへ。暗く静まり返った森の中に入ると、鳥や虫たちの鳴き声が聞こえてきます。
目をつぶって今日1日の出来事を振り返ります。
木の工場が楽しかったな
魚が美味しかったね
子どもたちにとっても心に残る1日となったようです。
あいにくの空模様だったものの、みんなの願いが通じたのか、少しの間、雲間からまたたく星たちが顔をのぞかせてくれました。
一瞬ではあったけれど、満点の星空を眺めながら家族で過ごす時間はとても温かくて充実したものになったのではないでしょうか。
森の草木を使って自分だけのお皿やお箸を作る
▲ 好きな形の板を選んで自分だけのお皿を作ります
2日目は、草木の温もりにふれるワークショップ。
「コダマデスク」を製作する木工職人・内木さんの手ほどきのもと、山で育った栗の木の端材を使って自分だけのオリジナル作品を作っていきます。
▲ 内木さんによると、栗の木は強度があり、耐水性に優れているので家の土台などに使われることも多いそう
彫刻刀や小刀、ノコギリやのみなどの道具を使って作業をします。
つい没頭してしまいますね
お父さんやお母さんのほうが真剣な表情で取り組んでいました。
端材そのものの形を活かしてまな板にしてみたり、角を削って丸皿にしてみたりと、みんな思い思いの形に仕上げていきます。
▲ 四角い板の角を落として丸いお皿が完成
▲ 自然素材だけで作った自分だけの器ができました。
村雲さん
小さな子どもたちは、丸太切りや桧のマイ箸づくりにチャレンジしてみましょう。
▲ お父さんと一緒にノコギリを使って丸太切り
▲ やすりで削って自分だけのお箸を作ります
朝の森林散歩で見つけた苔を使って苔玉づくりも。土台となる土で泥だんごを作る作業は、大人も子どもも一緒になって楽しめるもの。個性あふれる苔玉がたくさんできました。
▲ 養分になるケト土と鹿沼土を混ぜた泥だんごの中に、お気に入りの苗木を植えます
▲ 泥だんごの周りに自分たちで採ってきたコケを貼り、糸で巻いて固定したら完成です
▲ 山の思い出
山で過ごした盛りだくさんの2日間。
生きている木を間近でみたり、川で遊んだり、街での暮らしでは感じられなかったものを、子どもたちはそれぞれの感性で受け取ってくれたことと思います。「冒険旅行」を経験したことで、家に帰って自分の机に向かったとき、今よりももっと愛着がわいているのではないでしょうか。
冒険旅行を終えて
まつおさん
~街に住む私たちが地元の山を知ることから始めよう~
東白川村には6つの山があります。村で育った小学生は学年ごとに1つずつ山を制覇するそうで、卒業するときには村内のすべての山を知っているということになります。常に山が身近にある環境で、山の恵みを自然に学びながら育っていくのですね。
一方で、街に住む人たちは、山と自分たちの生活をリアルに結びつけることは難しいかもしれません。でも、こうした「冒険旅行」などの体験を通して、少しずつ山と街のつながりについて知っていくことはできます。
地球温暖化、CO2削減、日本の林業のこと、考えることはたくさんありますが、まずは、街に住む私たちが地元の山を、木を大切に思うことがスタート地点。
街の暮らしに山がどのように関わっているのか、親子で考えてみるのも素敵なことだと思ませんか。
▲ 5組の親子が参加した「コダマの冒険旅行」2020。ありがとうございました